行動制限とは、患者の生命や身体の安全を確保するために、他に方法がない場合にやむを得ず行う処置です。
よって、行動制限が必要となった場合には医療者はその理由を正しく理解しておくことが重要です。
患者に対しても、行動制限の目的や理由、どのようになったら制限解除になるのかを説明します。加えて、制限により自分で行うことができなくなったセルフケアについては看護師が援助することを説明し、患者の協力を得るようにすることがスムーズな看護ケアの実践につながります。興奮や混乱が著しく患者の理解や納得が得られなくても、これらの説明は必須です。そして、綿密に患者の身体状態および精神状態を観察し、行動制限開始時の問題が改善していれば、医師の診察と指示により速やかに行動制限を解除します。
また、行動制限により患者は多くの自由を制限されるため、かえって不安や恐怖が増強したり、患者の自尊感情を脅かし、医療者に対する不信感を生じさせることがあります。
被害感の強い患者は、行動制限を懲罰だと捉えることも多いです。このような感情は精神症状が回復した後にも、患者にとって外傷体験として残ったり、患者と看護師との信頼関係に影響を及ぼすこともあります。看護師は、一つ一つの看護ケアを行う際に、特に患者の尊厳を守る姿勢をもって対応することが大切です。行動制限によって生じる心理的な影響や二次的な身体合併症を最小限にすることは看護師の役割として重要になります。